【専門家インタビュー】FPも続けている不動産投資。成功のポイントは「ゆったりとした長期運用」

インタビュー実施日:2022.06.14

「大きなリスクが少ない」「長く運用すれば利益を生みやすい」「専門的な知識が無くても成功しやすい」などを理由に不動産投資を始める方がいます。お金のプロである、株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズの代表取締役・田中 佑輝(たなか ゆうき)様も、そんな不動産投資を続けている一人。「どのような人に向いているのか」「リターンを生むには?」「そもそもご自身の投資スタイルは?」などを伺いました。

<本記事取材のインタビュイー様>

田中 佑輝氏
株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ 代表取締役

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、東京スター銀行で専属ファイナンシャルプランナーとして、資産運用相談、日興コーディアル証券仲介業務、為替、セールスマネジャー、行員向け経済学、営業講師を経て独立系ファイナンシャルプランナーとして独立。

INDEX

Q.ファイナンシャルプランナー(FP)の方々は不動産投資に対してどのような印象をお持ちでしょうか?

不動産投資は短期間で利益がでるわけではありませんが、レバレッジを使い、お金を借りて投資する先として大変重要だと思います。下手に株式投資を行うよりも格段にリスクが低く、安定して運用できるという印象がありますね。私自身の資産においても、最も多くを占めるのは不動産です。

もちろん、不動産投資へのイメージはFPごとに異なるでしょう。しかし、この分野を得意とする当社所属のFPは「安定性が高い」「長期で所有すればリターンを得られる」「知識や経験が無くても始めやすい」と考えています。

初心者にも親和性がある理由としては「東京など需要が見込めるエリアを選べば、よほど運用を誤らない限り大損する可能性が極めて低い」ことが挙げられます。特に都内のワンルームマンションは入居率が非常に高いですよね。高級住宅地にあるデザイナーマンションなど、少しぐらい“攻めた物件”に投資しても、立ち直れないほどの損失を被ったという話はあまり聞きませんね。

Q.一方で投資信託や株式投資の印象はいかがですか?

投資信託も安定していてビギナーでも始められるでしょう。銘柄を正しく組み合わせて中長期で運用すれば、大きなマイナスを生むとは考えにくいです。

一方で株式には、複数の銘柄に広く投資するインデックス運用と個別株投資があります。後者の場合、特に日本株では市場の成長が見込めない中で飛躍しそうな企業を探し、投資のタイミングを計らなければなりません。米国株を買うよりも難しい印象ですが、銘柄の選択と投資時期というパターンさえ覚えてしまえば、一定の勝ちにつながると思います。

Q.不動産投資を相談・検討したり、実際に始めたりする方々の年齢層を教えてください

40代が中心で、全世代のおよそ4割を占めます。他にも“配偶者と子どもがいる”“都内在住”“年収1000万円以上”といった特徴のある方々が目立ちますね。当社のFPと一緒にライフプランを作成していく中で不動産投資に興味を持たれたり、すでに検討中の方がセカンドオピニオンを求めてお越しになったりすることが多いです。

なぜなら40代は、20代や30代に比べて“老後への不安が強い”“子どもに関する支出が増える”といった傾向にあるからでしょう。一線を引いた後のために貯金を始めるにしても、期間が短いため相当な資金を投入しなければならず、現在の生活を切り詰めることになります。

そこで借入金を使い、資金の持ち出しや生活レベルの低下を防ぎながら、資産を増やす手段として不動産投資が考えられるのです。確かに住宅ローンを組むのは心配ですが“老後に向けた不自由な暮らし”と天秤にかけると、選択肢の一つに数えられます。また40代はすでに住宅ローンを経験している方が多く、仕組みを理解しやすいことも後押ししていますね。

Q.不動産投資に対する不安の声をお聞きになっていますか?

「不動産投資という行為そのものをネガティブに思う」「不動産で借金を抱えて大丈夫なのか」などはよく伺います。おそらくバブル期の暴落を知っているので前向きになれないのでしょう。また「不動産価格が上昇している今、投資するタイミングが遅いのでは」といった声も耳にします。

気持ちは理解できますが、逆に「自分たちには不動産投資が適している」と気付いている方は1%にも達しません。当社のFPなどと会い「ご家族のライフプランを考えるなら検討しては」と提案を受け、初めて先ほどの不安があまり意味を持たないと理解するのです。

Q.不動産投資に不向きなのはどのようなタイプの方ですか?

何よりも短気な方でしょう。わずかな期間で結果を求めようとすると「半か丁か」といった博打の世界に陥りやすいです。

分かりやすく説明すると、ある不動産を現金1億円で購入し、5%に当たる500万円を年間の賃料に設定すれば、10年間で5000万円が手に入ることになります。しかも不動産価格は、その10年間で半額になることは極めてまれで、3割程度の下落でも業界では「相当に下がった」と判断するような安定ぶりです。短期間で売却せず、長期に保有することでリスクヘッジになるのです。 従って「時間をかけて運用すれば家賃収入で元が取れるよね」「10年や20年であれば不動産を所有しても経済的に大丈夫」と、ゆっくり、気長に待てる方のほうが結果的にお金を増やせるでしょう。逆に「短期間で大儲けしよう」といった意識で臨むと、ほぼ失敗に終わります。

Q.不動産投資において“成功するコツ”はありますか?

経験の浅い方にアドバイスするとしたら「ゆとりある資金で中長期に考えること」が最も簡単な方法です。「いずれ売却する物件」と「賃料を稼ぎ続ける物件」を分けるのも重要ですね。

私の場合「築地駅から徒歩1分の新築マンション」は長く所有するつもりで購入しました。早めの売却も一つの手ですが、エリア的に見ても時間をかけたほうが賃料のリターンを生むと確信してのことです。

一方、武蔵小杉駅そばにある2LDKの賃貸マンションは、そのまま貸し続けてもメリットが見込めず、契約終了と同時に売却しました。また、築40年のアパートを土地ごと購入し、取り壊して売却したこともあります。木造なので解体のコストも低く、少しの手間をかけるだけで購入時よりも値上がりする傾向にあります。

Q.不動産投資を始めるのに最適なタイミングはあるのでしょうか?

若ければ若いほど良いですね。私は24歳で不動産投資を始め、間もなく40歳を迎えますが、16年間の経験で「不動産はあまり価格が下がらない」と実感しています。しかもローンは賃料収入で払うことができ、35年もすれば完済しますよね。例えば新築で購入した都心中央区の2LDKマンションが築35年になって、物件の条件が悪かったとしても5,000万円ぐらいの価値が残っていると思います。
物件を長く所有して、その間にたくさんの家賃収入を得て、ローンを多く支払ってしまえば、その時点の物件価格とローン残高の差分がそのまま稼ぎになります。そのためには長く物件を所有することが大事です。

この“果実(稼ぎ)”は、30歳で始めたら65歳で、50歳であれば85歳で受け取れます。当然ながら、若くて元気なうちのほうがメリットになりますよね。

ちなみに投資が上手な方の特徴として“数字に強い”“エクセルなどを使った計算が好き”“情報収集に長けている”などが挙げられます。あとは企業における事業計画のように、複数の仮説を立ててシミュレーションできると良いでしょう。

地区1R~1DK1LDK~2DK2LDK~3DK3LDK~4DK4LDK~5DK5LDK以上
中央区3,016万円5,526万円8,205万円11,131万円11,800万円
引用:中古住宅HOME4U_【2022】東京都内のマンション売却相場を築年数別・地域別で解説

※試算結果はあくまでも目安です。実際の相場価格とは異なる場合がありますのでご了承ください。

Q.国内における不動産の現状をどのように感じていらっしゃいますか?

マクロなマーケットで感じるのは、これまで不動産価格は上昇し続けてきましたが、この先も下落する要素は見当たりません。また、日銀の金融緩和策も継続すると予想され、こうしたマネタリーベース(日銀が供給するお金)と不動産価格は相関関係にあるため影響を受けるでしょう。

加えて、日本の不動産は世界とは逆方向に進み、低金利を維持しています。しかも円安のため、海外のマネーが集まりやすい状況にあると考えられます。
※取材日:2022年6月14日

Q.投資家にとって、不動産投資はどのようなメリットがありますか?

ひと言でいうと「リターンが大きい割に安定している」ですね。100万円程度の初期費用を投じるだけで、10年や20年で2000万円ほどの利益を生むケースも数多くあります。同じく株式投資で2000万円を得るには、まず豊富な資金が必要であり、そもそも価値が20倍になる銘柄を探すこと自体が大変ですよね。

Q. 新築と中古買うならどちらの物件がおすすめですか?

よくある質問の中の1つですが、どちらも販売会社の利益が含まれていることにはかわりはありませんので関係ないと思ってます。

敢えて比較するのであれば、個人的には新築のほうが手軽と思っています。一般的に新築物件は新築プレミアムがある分、中古物件に比べて価格が高いと言われますが、賃料にも新築プレミアムがあるため賃料収入も高くなります。

また投資用ローンは住宅ローンと違って、ローンを組むにあたって築年数の縛りがあります。最長は築55年なので、仮に築20年の中古物件を購入し、購入から20年経過したら残りが15年になってしまい、次の買い手は15年しかローンが組めません。ローン年数が短くなれば毎月の返済額も大きくなるため値段を大きく下げないと売れないことがあります。

新築物件は購入して20年経過しても、次の買い手からすれば35年のローンを組めるので、ローンの返済額を抑えられるというメリットもあります。なので単純に金額で比較するものではないと思います。

Q. 田中様が監修された「100のあした診断」は、受けた方にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?

「正義感が強いほうですか?」「リーダーシップを発揮するタイプですか?」などの簡単な質問に答えながら、自分の性格に合った投資スタイルが見つかる、とても面白いコンテンツですよね。

お金と行動心理学は密接で、例えば「限界効用逓減(ていげん)の法則」は、宝くじ当選者などがお金を使うことに抵抗がなくなり、より浪費しないと快感を得られないことを説明しています。また「プロスペクト理論」では、宝くじで大金が当たる可能性が極めて低いにもかかわらず「ランチを安く済ませればいいか」などと言い訳をした上で「次は当たるはず」などと当選確率をゆがめる人間の心理を説いています。

こうした要素も取り入れながら、まずは自己分析してもらい、お金を前にして自分がどのような行動を取ればいいのか気付いてもらえたらと思います。結果を参考に、皆さんの資産運用がうまくいくことを願っています。