不動産投資の所得が増え、そろそろ法人化した方が良いかどうか迷っていませんか。「そこまで年収が多くないから」「もう少し戸数を増やしてから」などと考えなかなか踏み切れない人もいるのではないでしょうか。
実は不動産投資における法人化には多くのメリットがあり、条件次第ではすぐにでも法人化した方がいいケースがあります。この記事では、不動産投資の法人化に悩んでいる人のためにメリットだけでなくデメリットも徹底解説します。ぜひ最後まで読んでいただき、法人化についての知識を深めてください。
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法人を設立するためには、費用に加え、決めなければいけないことや、用意しなければならない書類がたくさんあります。その複雑さゆえに法人化に踏み切れないという方もいることでしょう。
そこでまずは、法人設立までの流れや具体的な方法について紹介します。ざっと全体像を見渡すだけでも具体的に法人化のイメージを持つことができます。肩の力を抜いて最後までご覧ください。
不動産投資事業を法人化するためには、以下のような設立事項を決める必要があります。
・社名
どのような社名でも構いませんが、特殊な記号を入れたり「〇〇銀行」など誤解を招いたりする単語は使えないので注意が必要です。
・所在地
自宅にすることも可能です。また登記に対応したレンタルオフィス等を利用しても良いでしょう。
・資本金
1円からでも設立可能です。ただし現実的には初期の運営コストなどを考え数十万円から数百万円にするのが一般的です。
・発起人
15歳以上であれば誰でもなることができます。本人1人でも家族や知人を含めた複数人でも構いません。
・取締役
株式会社を設立する場合、必ず1人以上の取締役が必要です。取締役は業務執行に関する意思決定を行い、その会社を代表します。
印鑑は最低でも2本は必要です。1本は会社実印、もう1本は会社銀行印です。
会社実印はその会社を表す最も重要な印鑑です。法務局で登記申請を行う時や、高額な取引を行う際に必要となるため、設立前に必ず用意しておきましょう。個人の実印と同じく、会社実印として使うためには印鑑登録が必要です。
会社銀行印は法人の銀行口座を開設したり手続きを行ったりする際に必要な印鑑です。会社のお金を移動するなど使用頻度が高いため前もって作っておくようにしましょう。
印鑑等の準備ができたら登記に必要な書類を作成しましょう。主なものは次の通りです。
・定款
基本的な会社のルールをまとめたものです。書式は決まっていませんが、必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)、記載しなければ有効にならない事項(相対的記載事項)などがあるため慎重に作成しましょう。
・登記申請書
申請のために必要な書類です。法務局のホームページでWordなどの書式が入手できるためパソコンで作成するのが一般的です。
・就任承諾書
取締役の就任を承諾したことを証明する書類です。取締役が1人の場合は不要です。
・取締役の印鑑証明書
発行後3か月以内のものを用意します。
他にも登録免許税分の収入印紙を貼付した台紙、資本金の振込を証明するための書類、印鑑届出書などが必要です。
必要書類を作成したらまずは公証役場で定款の認証を受け、その後法務局に行きます。法務局では設立登記の申請と会社印の登録を行います。設立登記の申請では会社の情報を国が管理する登記簿に登録します。これにより会社の情報などが登記簿謄本として取得できるようになります。
設立登記の申請や会社印の登録が終わり受理されると、約1~2週間程度で登記が完了します。設立後も税務署や都道府県税事務所、市町村役場、年金事務所などに設立の届出が必要になりますので忘れずに行うようにしましょう。
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ここまで法人化の流れを紹介しましたが、手続きが多く驚いた方もいるのではないでしょうか。確かに個人事業主の開業と比べると決定事項や手続き、必要書類の多さが際立ちます。しかし、法人化にはそれを上回るメリットがあるのもまた事実です。ここからは不動産投資で法人化するメリットを紹介します。
法人化は個人に比べると高い節税効果が期待できます。個人の場合、所得税と住民税を合わせた税率は最大55%(所得税5~45%+住民税10%)です。
一方、法人の場合は実行税率が20%台~30%台であることに加え、平成31年9月まで課税されていた「地方法人特別税率」が廃止されました。地方法人特別税率は、所得に対して43.2%も課税されていたので、この分がなくなるとかなりの減税になります。 (参考:『地方法人特別税』 ※外部サイトに移動します)
また不動産投資を法人で行うことにより、経費として計上できる範囲も個人より広くなります。例えば生命保険の保険料は、個人の場合、所得控除の対象となりますが、法人の場合は全額経費に算入することができます。
また個人の場合、青色事業専従者として家族への給与を上限なく控除できますが、文字通りに専従の必要があり、社会通念上妥当な金額でないと税務署から問い合わせを受けるなど、多くの制約があります。これも法人であれば家族への給与も役員報酬として計上することが可能です。
法人は個人と比べ社会的信用が高く、融資の審査に通りやすくなるといったメリットがあります。登記によって会社の情報が公示されていることや、個人に比べ、より厳密な会計処理が求められていることから、社会的信用が高くなるためです。
また法人は、権利義務の主体となることができるという意味で、法律上「人」として扱われるという点もメリットの一つです。「人」として扱われるといっても、個人のように寿命があるわけではないため、死亡や相続に関することを金融機関側が考えなくてよくなります。
融資を受けやすくなったり融資の金額が増えたりすれば、その分、投資できる不動産も増え、事業を拡大していくことにもつながります。
個人の場合、資金調達の手段は、融資や借入、補助金や助成金などに限られていますが、法人の場合は投資型のクラウドファンディングといった手段での資金調達も可能です。
クラウドファンディングについては、寄付型や購入型なら個人でも利用可能ですが、非上場の株式に投資する投資型(株式型)のクラウドファンディングは株式会社でなければ利用することはできません。
繰越損失は、その年度で損益通算してもなお赤字になる場合に、何年かに渡って損失を繰り越すことができる制度です。法人の場合、最大10年間繰り越しが可能です。個人の場合でも青色申告者であれば、最大3年間の繰り越しができますが、青色申告をするためには複式簿記という複雑な方法で記帳を行う必要があります。
複式簿記は会計処理の知識が必要なため、白色申告で済ませる事業主も多いようです。白色申告者の場合は損失を繰り越すことはできません。
任意で決算月を決定できることも法人化のメリットと言えるでしょう。個人事業主の場合、税法上で事業年度が1月1日~12月31日の期間と定められているため12月が決算月になります。しかし法人の場合は好きな月を決算月とすることができるため、計画的な節税対策が可能になるのです。
個人の場合は3月15日までに確定申告をする必要がありますが、法人は決算月から2か月後までに申告と納税をしなくてはいけません。ここで決算月の決め方について少し説明しておきましょう。
法人の場合、決算月は好きな月に決めることができますが、タイミングによっては損をすることもあるので注意が必要です。例えば法人は最初の2期は消費税を納税する必要がないため、この効果を最大限にするために初年度の期間を1年より短くすることは避けるべきです。
法人の場合、決算月は好きな月に決めることができますが、タイミングによっては損をすることもあるので注意が必要です。例えば法人は最初の2期は消費税を納税する必要がないため、この効果を最大限にするために初年度の期間を1年より短くすることは避けるべきです。
また繁忙期を決算月にするのもやめた方がいいでしょう。申告が期限を過ぎてしまえば延滞税が課せられるリスクも生じるからです。
多くのメリットがある不動産投資の法人化ですが、もちろんデメリットが一切ないわけではありません。ただし、考え得るデメリットはどれも法人化のために必要な手続きや条件に関係するものです。
したがって単に「デメリットがあるからやめておこう」と考えるのではなく、ここまで紹介してきたメリットが、デメリットを上回るかどうかという観点で判断することをおすすめします。法人化で考えられるデメリットを見ていきましょう。
個人事業主として開業する場合は、税務署に開業届を提出するだけです。記入する項目も十数項目しかないため5分もあれば完成します。また許可などをもらう必要もないため、窓口での待ち時間もほぼありません。
一方で、法人を設立するためにはさまざまな手続きが必要になります。書類の作成や印鑑作成から公証役場、法務局への提出などを経て、最短でも1週間はかかると思ったほうがいいでしょう。特に書類作成は初めて経験する方も多いため、時間がかかるだけでなく複雑で面倒に感じる人も多いのではないかと思います。
個人事業主に比べ、法人の税務処理、会計処理は複雑です。そのため、ほとんどの場合は税理士に記帳代行や申告代行または顧問契約をお願いすることになります。顧問契約を結べば当然費用が発生します。年商によっても異なりますが、相場としては年額で50万円~70万円程度が必要となります。
ただ、こうした維持費用は、事業の規模が大きくなればなるほど費用対効果も大きくなります。税理士報酬より節税効果が上回れば、一概にデメリットとは言い切れません。
不動産投資は専業で行う場合とサラリーマンなど会社員をしながら兼業で行う場合があります。兼業で行っている場合、不動産投資を法人化することで副業と判断される可能性があります。
2017年のリクルートキャリアの調査によると、兼業や副業を禁止している企業は7割以上にも上ります。不動産投資を法人化して副業とみなされた場合は、就業規則違反として懲戒の対象となる可能性もあります。特に公務員の場合は法律によって副業が禁止されています。
個人の場合、所有する不動産を売却した場合の所得税について、期間による違いがあります。所有する不動産を5年以内で売却した場合の税率は39%。5年を超えて売却した場合の税率は20%です。これを長期譲渡所得の優遇税制といいます。
一方、法人の場合は長期譲渡所得の優遇制度は利用できません。期間の長短に関わらず一律に課税されます。法人税の最低税率は約22%であるため、5年を超えて物件を売却する場合は、個人に比べ税率が不利になります。
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法人化に関するメリットとデメリットを見て、「今すぐにでも動き始めよう」と考えている方もいるかもしれません。しかし法人化には適切なタイミングがあるため時期を誤ってしまうと損をしてしまう可能性もあります。そこで最後に不動産投資において法人化すべきタイミングについて紹介します。
この記事を読んでいる方の中にはまだ不動産投資自体していない方も多くいらっしゃることと思います。もしこれから不動産投資をしようと考えているのであれば、最初から法人化することを見据えた上で検討しても良いかも知れません。
「まだ所得も得ていないのにコストをかけて法人化する必要があるのか」と思うかもしれません。しかし法人であれば大きな節税効果が期待できるため、法人設立当初のコストは大きな負担ではなくなっていきます。
何よりも途中から法人にしてしまうと、新たに不動産取得税と登記費用がかかってしまいます。個人で所有している物件を法人の所有にするためには、個人が法人へ売却するという形をとる必要があるからです。
同じ物件に対して2回も不動産取得税と登記費用を支払うことを考えると、最初から法人化した方が無駄なコストをかけずに事業を進めていくことができるわけです。
「理屈はわかるけど、やはり最初から法人化させるのはハードルが高い」と感じる人は、税額が低くなるタイミングで法人化するのも良いでしょう。一般的には課税所得金額が900万円を超えると税率が43%になり、法人税の最大税率約38%を超えるため、このラインで法人化すべきという意見もあります。
しかし法人税率が約38%になるのは課税所得が800万円超の法人です。不動産投資の多くは中小企業の扱いとなる、所得800万円以下が一般的です。そして所得800万円以下の会社の法人税率は約25%、これは個人の課税所得330万円超~695万円以下の税率30%を下回ります。
課税所得330万円は給与収入でいうと500~600万円くらいの年収に相当するため、これくらいの収入があるのであれば既に法人化に適切なタイミングであると言えるでしょう。
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本記事で紹介したように法人化には多くのメリットがあり、特に不動産投資を行うような中小企業の規模であれば税制面でも大きく優遇されています。一方で法人化するためには費用や手続きといったさまざまな面で障壁があることも事実です。また、適切なタイミングを読む必要があるため、不動産投資初心者には難しい手段といえるでしょう。
本記事で不動産投資への不安を払拭できなかった方は、不動産投資のプロに相談してみるのも一つの手です。トーシンパートナーズは不動産投資のプロとして、お客様一人ひとりへの最適な提案を心がけています。どんな悩みにも真摯に対応いたしますので、ぜひ一度ご相談ください。