不動産投資における減価償却の仕組みや計算方法は?
上手に利用するポイントを紹介

パソコンをはじめとする機械や建物など、収益に関わる固定資産は「減価償却資産」として扱われます。不動産投資でも適切に計上する必要がありますが、具体的な方法が分からず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、減価償却の基本的な仕組みから実際の計算方法まで詳しく解説します。金銭面でのメリットを知ると、今後の資産形成にも役立てやすくなるでしょう。要否を判断するためのポイントもご紹介します。

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    不動産投資における減価償却の仕組みとは?

    住宅ローンを組んだことがある方は住宅ローン減税の適用を受けた経験があるかも知れません。住宅ローン減税とは異なるかたちで税金対策ができる方法が不動産投資にはあります。不動産投資で税金対策をする際にポイントとなるのが減価償却の考え方であり、減価償却の仕組みを理解しておくと、なぜ税金の出費を抑えられるのかがわかります。まずは不動産投資における減価償却の基本的な考え方と、法定耐用年数との関係性を理解しておきましょう。2つの項目に分けて解説します。

    不動産投資の減価償却とは

    年数が経過するに従い、資産価値が低下する物に対して反映されるのが「減価償却」です。不動産の場合、建物は年数が経過しても利用することができますが、建物の劣化に伴って、建物としての資産価値は下がっていきます。ただし視覚的な情報で建物の価値は測ることができないため、一般的には企業の経理に用いられる方法ですが、不動産投資では財務の観点から計算します。

    また不動産投資には収入と経費があり、減価償却費は経費として計上することができるので、節税にも役立つため、しっかりと理解を深めておきましょう。

    法定耐用年数との関係

    減価償却の知識を蓄える上で押さえておきたいのが「法定耐用年数」です。法定耐用年数は「どのくらいの期間で資産価値がなくなるか」が法律で定められており、以下は、住宅を想定した代表例です。

    (参考:『耐用年数(建物/建物附属設備) 国税庁 NATIONAL TAX AGENCY』

    投資用の鉄筋コンクリート造マンションを購入した場合、47年にわたって減価償却を行うことになります。47年以降は、賃貸を続けている状況であっても「建物には価値がない」と認識されるルールです。


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      不動産投資における減価償却費の計算方法

      実際に計上する際は、定額法・定率法・簡便法いずれかの方法を用いる必要があります。投資をスタートしたときの契約内容で異なるケースもあるため、適切な方法を反映できるようチェックしておきましょう。具体的な数字を使って行うシミュレーションも重要です。3種類の計算方法における概要と、具体的もあわせて解説します。

      定額法による計算方法

      1年間の減価償却費を原則一定とし、法定耐用年数に則って計上する方法が「定額法」です。不動産投資では、3種類の中でも定額法が多く用いられています。計算方法は以下のとおりです。

      定額法の償却限度額=取得価額×定額法償却率

      ※取得価額=建物にかかる費用
      ※定額法償却率=耐用年数に応じて定められた定額法の償却率

      定額法の償却率は、耐用年数によって区分されます。計算において重要な要素となるため、国税庁HPに記載された情報を参考にしながら算出してみましょう。以下は具体的な数字を例に挙げた条件と結果です。

      毎年230万円ずつ価値が下がり、22年後に0円となる結果が算出されました。このように、単純な計算方法であるため比較的容易にシミュレーションできるでしょう。

      (参考:『減価償却資産の償却率表』

      定率法による計算方法

      投資を開始してから償却した金額を考慮した上で計算する方法が「定率法」です。以下の計算式に当てはめて算出します。あわせて具体的な例も確認しておきましょう。

      定率法の償却限度額=(取得価額-これまでに償却した金額)×定率法償却率

      償却率に乗じる数字が減少するため、経過年数が長いほど少額になる仕組みです。また、定率法ではあらかじめ定められた「保証率」も反映しなければなりません。償却額が保証額に満たない場合、別途区分される数字を用いて算出します。
      ※保証率=資産の取得価額に当該資産の耐用年数に応じた設定された割合

      簡便法による計算方法

      投資用の不動産を中古で購入した場合、計上の際に用いる方法が「簡便法」です。購入後に法定耐用年数を適用すると本質的な考え方にそぐわないため、新築物件とは異なるルールを設けています。耐用年数を算出する方法として、以下の2パターンを押さえておきましょう。

      法定耐用年数を超えていない耐用年数=(法定耐用年数-築年数)+築年数×20%
      法定耐用年数以上の期間が経過している耐用年数=法定耐用年数×20%

      経過年数に合った方法を用いるのがポイントです。法定耐用年数が22年の木造住宅を築年数5年の状態で購入した場合、耐用年数は以下の流れで算出できます。

      (参考:『No.5404 中古資産の耐用年数』

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      不動産投資で減価償却を経費計上できるメリット

      投資関係の出費に伴う経費ではなく、支出がない状態で経費に計上できる点が減価償却の魅力です。一般的に「経費」として扱われる項目との違いを明確にすると、固定資産に投資する不動産投資ならではのメリットを実感できるでしょう。

      負担を軽減するための損益通算についても理解しておくのがおすすめです。2つの観点から、減価償却によって得られるメリットを解説します。

      実際には支出がないのに経費になる

      「経費」と聞いてイメージされやすいのは、勤め先での接待や事務用品の購入時に発生する費用です。実際に支払った金額を計上し、個人的な出費にならないよう申告します。利益につなげるための出費を反映するのが、経費の基本的な考え方です。

      一方、減価償却資産は実際には出費を伴いません。不動産投資の場合、前述の通り購入費用に占める建物部分の金額を一括で経費計上せず定められた年数分継続的に経費計上されるため、法定耐用年数を超えるまでは建物そのものが経費の一部となります。

      購入費用以外の支出がない状況でも計上できる点は、節税効果を得やすいメリットのひとつです。不動産投資のみならず、「減価償却の対象となるかどうか」が基準である点を理解しておきましょう。

      損益通算で節税ができる

      不動産投資を始める際には、物件以外にもさまざまな費用を負担する必要があります。特に初期段階では必要な手続きにかかる費用が多く、購入費用も含めると損失を生むかもしれません。このようなシーンで役立つのが「損益通算」です。

      損益通算では、給与所得と投資用不動産を運用した際に発生する不動産所得の利益・損失の相殺が可能です。

      会社に勤めている方は年末調整で税金を支払っていますが、不動産所得が帳簿上だけでも赤字になった場合、確定申告時に損益通算を行うことで課税対象額が減額されます。課税対象額が減ったことにより本来の納税すべき税額も減らされるため、年末調整時点では払いすぎていることとなり、その分の税金が後々還付されるという仕組みです。赤字部分の税金を節約できるため、損益計算の記録も重要といえるでしょう。

      不動産投資における減価償却の注意点

      税金の観点でもお得な結果を期待できる不動産投資ですが、かえって損な結果を生むリスクも考慮する必要があります。場合によっては高額な税金の支払いを求められるかもしれません。節税を重視しすぎると、指摘の対象となりやすい点も理解しておきましょう。あらかじめ注意したいポイントを2つご紹介します。

      売却時に税金が高くなる場合がある

      税金関係のリスクとして押さえておきたいのは、売却時の税金が高額になる可能性です。不動産を売ったときに得られるお金は、他の所得とは別の区分で取り扱われます。計上する際の項目は「譲渡所得」です。以下の計算式をチェックしておきましょう。

      計算式課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費用+譲渡費用)-特別控除額
      各項目の定義[colspan2]
      譲渡費用仲介手数料や住民への立退料など、売却のために要した費用
      取得費不動産の購入費用(建物は減価償却費相当額を差し引く)
      特別控除額収用などは最高5,000万円、マイホームは最高3,000万円を控除

      さらに、不動産の所有期間によって所得税・住民税の税率も異なります。所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」に該当し、5年以上所有した不動産よりも高税率になる仕組みです。

      (参考:『土地や建物を売ったとき』

      税務調査時に指摘を受ける場合がある

      オーナー自身が確定申告を行う場合は、月々の損益を明確にした上で書類を作成しなければなりません。このとき、不確かな情報や金額の不信感があると税務調査が行われるケースもあります。理由として挙げられるのは以下のような内容です。

      税務調査が実行されても、申告情報に間違いがなければ問題ありません。万が一計算ミスや認識の違いがあった場合、ペナルティとして税金が増額される可能性もあります。

      節税効果を得るために架空の損失額を記入したり、耐用年数を長期化したりといった対策は適切といえません。結果的に損を招くことになるため、情報の整合性は入念にチェックしましょう。

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      減価償却が必要となるケース

      不動産を所有している方でも、状況によっては減価償却が不要なケースもあります。あくまで収入に対して該当する要素となっているためです。具体的にはどのような場合に必要なのか、要否を判断するためにも理解を深めておきましょう。不動産収入・売却2パターンの項目に分けて解説します。

      不動産収入があるケース

      減価償却は、固定資産に対して収入が発生したときに反映する計算方法です。投資用の不動産を購入し、家賃収入を得ている状況であれば該当します。確定申告書を用意し、法定耐用年数などの情報を収集した上で記入していきましょう。

      反対に、自宅用のみに利用している不動産は対象外です。損益の概念がないため、減価償却を計算したり申告したりする必要はありません。

      物件を売却するケース

      賃貸に利用していた不動産を売却する際にも減価償却を反映します。譲渡所得の課税対象額を計算するとき、「取得費」に減価償却費を含めないためです。建物の費用から減価償却費を差し引く作業を忘れないよう注意しましょう。

      減価償却のやり方とポイント

      建物の種類や金額によって結果が変動するため、減価償却の計算そのものに苦手意識を持つ方もいるかもしれません。適切なかたちで処理を行い、可能な限り損失を抑える出口戦略も大切です。土地との取り扱いを明確に分けると、計算もスムーズになるでしょう。ここからは、実践に役立つ償却方法とポイントを詳しく解説します。

      出口戦略を立てて減価償却の費用を考える

      不動産投資において重要といえるのは、「節税することに固執しない」という意識です。複数の観点からメリット・デメリットを理解し、リスクや損失を回避しやすい結果を予測する必要があります。

      単純な考え方では、建物の費用割合が大きいほど減価償却の効果を高められます。土地には減価償却が適用されず、土地・建物の比率が償却費に影響するためです。しかし、建物割合が高い物件を基準に選定するとリスクが高くなるかも知れません。

      リスクを抑えるために、立地や内観なども重視しましょう。将来的な利益につなげながら、減価償却のメリットも実感できる物件選びが重要です。空室が発生しにくい条件など、リスクに備えて対策を考えるのも有益といえます。

      土地と建物で不動産価格を分ける

      減価償却の計算時には、土地・建物の価格を分ける作業が必要です。土地と建物をまとめた購入した場合、建物の費用のみが償却の対象となるからです。正確な情報を得るために、契約時に受け取った書類を確認しましょう。

      2つの項目を設けて、それぞれの具体的な金額を記載しているケースもあります。消費税の記載方法もチェックし、内容に合わせて最終的な金額を算出しましょう。

      建物の金額が分からない場合は、時価における比率を見極める必要があります。オーナーの独断で計上する場合もありますが、判断が難しい場合は販売元に相談した方が安心です。税務調査の対象になる可能性も考えられるため、プロに相談しながら正確な金額に分けましょう。

      減価償却費を算出する

      建物にかかる費用が明確になった後、実際に計算を進めていきます。現在不動産を所有・運用している方は、購入時期も把握しておきましょう。2007年度に法律が改正され、減価償却に関する取り扱いにも変更が加えられました。購入時期によって以下のような違いがあります。

      購入日2007年3月31日以前2007年4月1日以降
      償却可能限度額取得価額の95%相当額(到達後は残存簿価1円まで)残存簿価1円
      償却方法・旧定額法
      ・旧定率法
      ・旧生産高比例法など
      ・定額法
      ・定率法
      ・生産高比例法など

      2007年4月1日以降の取得価額が95%に到達した場合は、新しい税制と同様に1円までの残存簿価が適用可能です。購入時期に合った区分を判断し、金額を算出してみましょう。

      (参考:『法人の減価償却制度の改正のあらまし』

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      減価償却は投資前に押さえておきたい計算方法ですが、複雑なルールに戸惑うことがあるかもしれません。「正しい数字になっているか分からない」「しっかり理解できていない」と不安を感じる方は、ぜひトーシンパートナーズにご相談ください。

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      まとめ

      不動産投資で資産形成を目指すとき、重要な知識として理解しておきたいのが「減価償却」に関する取り扱いです。契約内容や建物によって計算方法も異なります。

      仕組みを適切に利用することで節税効果も得られますが、申告内容に誤りがあった場合、税務調査の対象となるリスクには注意が必要です。適切な方法が分からず不安や悩みを抱えている方は、トーシンパートナーズにお任せください。

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