昨今、不動産価格は上昇傾向にありますが、今後もいまの状態が続くのか気になっている方も多いでしょう。不動産価格の今後を予測するには、過去の推移や国内・海外の動向を踏まえることが重要です。
そこで本記事では、不動産価格が上昇する理由や下落するタイミングなどをもとに今後の動向を解説します。本記事を読めば、不動産価格が上昇・下落する要因がわかり、不動産取引の時期を見極められるでしょう。
不動産価格の推移を知るには、国土交通省が公表している不動産価格指数を参考にしましょう。
不動産価格指数とは、年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、不動産価格の動向を指数化したものです。住宅は3ヵ月前の不動産価格指数が毎月公表されるため、早い段階で不動産価格の推移が把握できます。
2023年7月分の住宅の不動産価格指数は以下のとおりです。
不動産価格指数は2010年の不動産価格の平均を100としています。マンションの価格は2013年頃から年々上昇しており、2023年7月では約1.9倍にまで上昇しました。戸建住宅や住宅地においても、2020年以降は上昇傾向が強いのがわかります。
不動産価格指数は全国だけではなく、地方ブロック別や都市圏別でも集計されているため、各地域の不動産価格の推移を知ることが可能です。
参考元:国土交通省|不動産価格指数(令和5年7月・令和5年第2四半期分)
国土交通省の「建築着工統計調査報告」によると、2013年の新築住宅着工戸数は約98万戸でしたが、2022年には約86万戸まで減少しています。それだけではなく、株式会社野村総合研究所の調査では、新設住宅着工戸数は2022年の約86万戸から2030年には約74万戸、2040年には約55万戸と年々減少していくと予測されているのです。
新築マンションにおいても、2013年の着工戸数は約12万戸であるのに対し、2022年は約11万戸と1万戸も減少しています。
新築住宅や新築マンションの着工戸数は減少傾向にある反面、中古物件の取引数は上昇傾向にあります。中古物件については次章で詳しく見ていきましょう。
参考元:国土交通省|建築着工統計調査報告
株式会社野村総合研究所|2040年度の新設住宅着工戸数は55万戸に減少
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中古物件の価格は上昇傾向にあります。日本経済新聞に掲載された、首都圏の中古マンション価格の推移は以下のとおりです。
首都圏の中古マンション価格は全体的に上昇しており、特に東京23区の価格は大きく上昇しています。2013年では平均2,612万円でしたが、2022年には平均4,003万円まで上昇しました。
また、一般社団法人不動産流通経営協会の「既存住宅流通量の地域別推計について」によると、全国の中古物件の流通推計量は2013年では約51万件でしたが、2020年には約56万件まで増加しました。
中古物件の取引が増えていることに加え、リフォーム市場規模も拡大傾向にあります。2021年のリフォーム市場規模は約7.6兆円でしたが、2040年には8兆円代後半となる見込みです。
参考元:株式会社野村総合研究所|2040年度の新設住宅着工戸数は55万戸に減少
日本経済新聞|首都圏中古住宅、価格が横ばい傾向に 下落はあるか
一般社団法人不動産流通経営協会|既存住宅流通量の地域別推計について
不動産価格が上昇している主な理由は以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
日本の不動産価格が上昇している理由のひとつに、金融緩和によるインフレーション(物価上昇)の影響があります。
日本銀行(日銀)は、2013年頃から大規模な金融緩和を始めましたが、不動産価格も同じタイミングで上昇していきました。これは、金融緩和による低金利の影響で住宅ローンを組みやすくなり、高額な物件を購入しやすくなったことが考えられます。
2023年11月時点の三井住友銀行の住宅ローン金利は、変動金利型で年0.475%〜となっています。
土地の数には限りがあるため、不動産需要が高まることで不動産の価値も高まり、価格も比例して上昇しています。
2022年頃から円安傾向が続いており、外国人投資家の需要が増えていることが不動産価格の上昇要因となっています。
例えば、1ドル100円が円安によって1ドル150円になったと仮定します。6,000万円の不動産を購入するには、もともと60万ドル必要でしたが、円安になった結果40万ドルで購入が可能です。
不動産価格は需要と供給で決まります。円安傾向が続いていることで、外国人投資家は日本の不動産の購入に割安感を抱きやすくなり、需要が増えてます。
不動産価格は、以下のような世界情勢の影響を大きく受けます。
世界的に流行した新型コロナウイルスによって、日本を含む世界各国が金融緩和政策を実施しました。結果として低金利の影響で住宅ローンを組みやすくなり、物件を購入しやすくなりました。
また、建材費の高騰も不動産価格が上昇している要因です。ロシアによるウクライナ侵攻によって、ロシアから原油や木材を輸入することが制限されました。建材は輸入しているものも多く、円安がさらに拍車をかけ、不動産価格の上昇につながっています。
日本では今後も低金利が続く展望であるため、不動産を購入しやすく取引も活発に行われることが予測されます。不動産価値も下がりにくくなるでしょう。
日本が金利を上げられず、低金利が続くという主な理由は以下のとおりです。
日銀は50%以上の国債を抱えており、財政政策と金融政策が切り離せない関係にあります。
安易に金利を上げてしまうと、国債の利払いが増えてしまいます。国債の利払いが増えることは、国の歳出が増えることを意味するため、社会保障費の削減や増税など、国民の負担が大きくなるでしょう。
また、2022年には海外の主要国と金利差が生じた結果、財務省は金利を上げるのではなく、大規模な円買いという外国為替市場の介入を行った事実があります。
これらの理由により、日本では今後も低金利が続くとされています。
不動産価格は、以下のようなタイミングで下落する可能性があります。
それぞれ詳しく解説します。
日銀が利上げをすれば、不動産価格が下落に転じる可能性があります。金利が上がると住宅ローンを組みにくくなり、高額な物件を購入するのが難しくなるためです。
日本が金利を上げられず、低金利が続く理由は前章で解説しましたが、過度なインフレが続くことも国民の負担になります。インフレを抑えるために日銀が利上げをする可能性はゼロではないことから、日銀の動向はチェックしておきましょう。
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不動産価格がこのまま上昇していけば、バブル時代のような社会問題にまで発展する可能性があります。日銀が利上げできないのであれば、不動産取引を減らすために、何らかの規制がかかることは十分考えられます。
かつては、投機的な取引を抑制するために「地価税」という税金がありました。現在は課税されていませんが、地価税が復活すれば不動産取引を規制する要因となり、不動産価格の下落につながるでしょう。
不動産価格は、株価の動向に1年程度遅れて連動する傾向にあるため、株価が暴落すると1年後を目安に不動産価格がさがる可能性があります。
株価がさがるタイミングは以下のようなケースです。
株価は、株を売買したい方がどのくらいいるかによって変動します。企業の業績や景気が悪化すれば買い手は減るため、株価が下落しやすくなります。
不動産価格の今後を予測するには、株式の市況も注視しておくのがポイントです。
不動産取引の時期を見極めるには、以下のポイントを押さえておきましょう。
それぞれ詳しく解説します。
不動産価格は変動するものですが、すべての不動産が相場通りに動くとは限りません。不動産価格は、築年数や周辺環境などさまざまな要因に影響されるため、最終的な不動産取引のタイミングは、総合的に判断する必要があります。
不動産価格が高い時期では、高値掴みを懸念される方もいますが、不動産投資においては早い段階で購入するのが得策です。不動産投資は家賃収入を得るのが目的であるため、購入が遅くなればなるほど家賃収入を得る機会を逃すこと(機会損失)につながります。
不動産取引のタイミングは、不動産価格に執着し過ぎず、さまざまな角度から検討する必要があります。
不動産取引のタイミングを総合的に判断するのは、素人では難しいことも多いため、信頼できる不動産会社を見つけて相談しながら進めるようにしましょう。
信頼できる不動産会社を探すには、以下のポイントを確認しましょう。
まずは売却予定の不動産を購入した会社に買取や仲介などを相談するのが手っ取り早いはずです。ただし複数社から提案を引き出すことでご自身の条件に合う不動産会社を見つけ、各社並行して相談しながら進めることで、より良い不動産取引ができるでしょう。
不動産を少しでも高く売るためには、複数社に査定依頼をしましょう。複数社に査定依頼することで査定価格の相場を把握できることに加え、信頼できる不動産会社を見つけやすくなります。
ただし、売却依頼を受けるために、根拠もなく高い査定価格を提示する不動産会社もいるため注意しましょう。査定価格の根拠や担当者の対応などを細かく確認し、信頼できる不動産会社に売却を依頼しましょう。
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不動産価格が上昇する理由は、金融緩和によるインフレや世界情勢の影響などがあります。日本は今後も低金利が続くと予測されるため、不動産を購入しやすい状況が続くでしょう。
不動産取引のタイミングを見極めるには、査定を複数社に依頼し、信頼できる不動産会社と相談しながら総合的に判断することが重要です。
日銀や株価の動き次第では、不動産価格は今後下落する可能性もあり、どうなるかは誰にもわかりません。日頃から国内・海外の情勢などを注視しておきましょう。