INTERVIEW0004|【専門家インタビュー】不動産投資市場の現状と最近の動きについて

インタビュー実施日:2024.03.15

<本記事取材のインタビュイー様>

山本尚宏氏
株式会社WonderSpace 代表取締役社長

1982年神奈川県生まれ。2006年東京大学理学部数学科を中退。在学中に司法試験の勉強を開始(短答式試験合格)。その後、2007年に法律事務所オーセンスに勤務。2010年オーセンスグループ株式会社(現弁護士ドットコム株式会社)にて法人営業などに従事。2012年より参議院議員(当時)で弁護士でもある丸山和也氏の秘書(国会議員秘書)を務める。2013年企業のWebマーケティングを支援する株式会社猿を設立。2014年不動産投資に特化した専門サイト「不動産投資の教科書」を運営する株式会社不動産投資の教科書を設立。2021年株式会社猿にて、株式会社不動産投資の教科書を吸収合併。同年、株式会社猿から株式会社WonderSpaceに商号変更。不動産投資家に、「本当に良質な不動産投資会社だけをお薦めする」という経営理念のもと、業界の健全化に貢献すべく日々奮闘中。

不動産投資の教科書 公式サイト:https://fudousan-kyokasho.com/

INDEX

Q.直近の不動産投資に関して、どのような印象をお持ちでしょうか。

コロナ禍やウクライナ侵攻など世界を揺るがす大きな動きがありました。そのような中でも、不動産投資を新規に始めたいという投資家はかなり増えている印象です。皆さん、本能的にも自身の資産を守らなければという想いが強くなっていると感じています。

日本人は、古くから投資をしない民族であると言われてきました。ただ、ここに来て明らかにその意識が変わって来ていると思います。いままで、当社の不動産投資の教科書編集部で不動産投資に関するご相談にのっていたのは、30〜40代の会社員が多かったです。しかし最近では、20代の若い層や、定年を見据えた50代のシニア層まで、投資家の年代層が拡大しています。

また、中国等の海外投資家の方も増えてきていますね。世界の主要都市における物件価格の利回りを見ても、東京をはじめとした日本国内の物件の利回りは高い状況です。このように、不動産投資を検討する投資家候補のすそ野が明らかに広がっていると感じています。

年収も500万円の方から1,500万円くらいの方まで幅広いです。年収1,000万円を超えてくるとアパート1棟投資を始めたいという人も多いですが、多くのケースでは区分マンションを所望されていますね。

大手不動産会社のAmazonポイントをフックにした大体的なキャンペーンにより、不動産投資を初めて知ったという投資家も多くなってきています。純粋に不動産投資を始めたいという想いよりは、単に不労所得を得たいという人も多くなってきているとも感じています。「ポイ活」をとおして不動産投資に触れ、ポイントを貯めながら、自身の将来の不安に向き合い不安を解消していくという流れです。それ自体は良いと思いますが、投資未経験の人が注意を要するのは、悪徳不動産会社に騙されて、割高に物件を購入してしまうことでしょう。

Q.不動産投資と株式投資の違いは何でしょうか?

私は、不動産投資も株式投資もしています。どちらも長期的に投資をしようということ、今後のインフレ対策では必要な投資である、という視点では同じなのですが、短期の視点で見ると、例えば株式投資は2日間で株価が10%乱高下するなど、ボラティリティが大きい。つまり、株式投資はハイリスクハイリターンの投資です。

今年から新NISAの制度も始まり、巷ではオルカンやS&Pへの投資をして成功しているという声もよく聞きます。単に現金を保有しておくよりは、皆さん、何らかの投資をしている人が多いですね。

 保有するうえでの共通点としては、どちらも長く持ち続けた方が良いところでしょう。特に株式投資に関して言及しますと、ウォーレン・バフェットもコカ・コーラ株をずっと持ち続けています。最近では、日本の5大商社もポートフォリオに入れたという報道がありましたが、おそらくずっと保有していくことでしょう。長く保有するスタンスを取ることで、日々の値動きに一喜一憂することはなくなります。

 一方、不動産投資は、株式投資と比較すると爆発的に利益を上げるということはありませんが、家賃収入を堅実に獲得でき、ミドルリスク・ミドルリターンの投資であると思います。資産運用・資産形成の観点で見ると、どちらかに偏ることなく、バランスよく投資をした方が良いと感じています。

株式投資をするにあたり、金融機関がお金を貸してくれる、ということはまずありません。しかし、不動産投資では、初心者の方は、区分マンションを選択するケースが多いと思いますが、少ない自己資金でレバレッジを利かせた取引ができるのも魅力です。金融機関が物件そのものの資産価値を評価してくれて、それを担保に長期の融資を受けることができるからです。したがって、自己資金は少なくとも、金融機関の融資を上手に活用することで資産形成をすることが可能なのです。

Q.マイナス金利が解除されて金利が上がりそうですが、不動産投資のタイミングとして今はどうなのでしょうか。

現在マイナス金利が解除され、国債の金利も上昇している中で、不動産投資の金利も上がる可能性があります。一般的に不動産の金利が上昇すると物件価格は下がる傾向にあるので、そのことを捉えると金利が上昇し、物件価格が下がるまで待ってから購入するのが一つの戦略として考えられます。

一方で、現在の経済状況を見ると、インフレ傾向が強まっています。例えば、私たちが所有する不動産でも、最近家賃を4000円値上げしました。このように、インフレによって不動産の値上がりも考えられます。

金利の上昇によって不動産価格が下がることも考えられますが、それを超えるインフレによる価格上昇圧力も存在することを考えると、今のタイミングで不動産を購入することは検討に値すると考えています。

Q.良い不動産会社の見極め方を教えてください。

物件ありきの提案ではなく、まず、投資家がどのようなライフプランを思い描いているのか、将来どのようにありたいのか、をしっかりとヒアリングしてくれる会社かどうかは重要だと考えています。

自身が保有している物件を売却したいと思ったときに、現在の市況でどのくらいの値段がつくのか、そもそも、いま売却した方が良いのかなど、投資家に誠実に適切なアドバイスをしてくれるかどうかは見極めたいところです。

不動産会社が持続的に成長していくうえで、どの分野にお金をかけていくかは難しいところです。適切なタイミングで、新規サービスも開発していく必要がありますが、これをやったら、お客様が増えていくという決まった答えはなかなかありません。不動産会社として短期的に儲からなくても、お客様にとって真に価値あるサービスを作り続けていく姿勢は大事であると考えています。

その中でも、賃貸管理はとても重要です。日本の人口は35年後には1億人を切ってしまうという予測があります。この大競争時代の中、入居が入り続ける物件というのが大事です。ちまたには、毎月の管理手数料が1,000以下のところもあると聞きますが、きちんと管理をしてくれるのか疑問です。安かろう、悪かろうでは元も子もありません。また、広告宣伝費を過剰にかけず、賃貸ニーズのある物件をリーズナブルな価格で販売しているかも大事ですね。

Q.優良物件の選び方の原則を教えてください。

私が考える「優良物件」は、必ずしも、誰もが知っている駅に所在する物件でなくとも良いというものです。優良物件というと、赤坂や青山、表参道等の高級エリアや知名度が高い駅を想像してしまいますが、不動産投資では、賃貸需要が高いかどうかで選ぶと良いでしょう。東京も20年後までは人口が増加する、と言われていますが、長く家賃収入を得るということであれば、きちんと賃貸需要があるエリアなのかどうかという視点が大事です。

また、賃料が周辺相場の賃料と比較して同水準であるかどうか、割高でないかは確認すると良いでしょう。最寄り駅からの距離も重要です。物件にもよりますが、徒歩10分以内、できれば徒歩8分以内で探して行きたいですね。徒歩5分前後の物件であれば、賃貸ニーズも高まりますが、当然、物件価格に反映されます。

物件を購入する場合には、できれば物件見学をすることをおすすめしています。もちろん、Googleマップでも確認できますが、自分の目で見ることが大事です。

不動産投資の検討を始める際、最初に自身が理想とする物件のスペックを高く設定し過ぎてしまうと、なかなか選定することができません。入居者の視点で住みたいかどうかを肌で感じることです。

Q.物件を購入するのであれば、新築と中古とどちらがおすすめでしょうか?

投資家の属性や背景等も関わってくるため、杓子定規に、投資家の年齢が若ければ新築を、そうでなければ中古を、というようなアドバイスはしていません。昨今では、新築物件の価格の高さが取りざたされていますが、中古物件でも必ずしも割安ではありません。

 不動産投資は長丁場な投資です。物件購入時には、どのくらい永きに渡って家賃を確保することができるかはシミュレーションしなければならないでしょう。

おすすめの考え方として、例えば、複数の物件を保有するということであれば、竣工時期を分けて持つ、というのは有効でしょう(例:新築と築浅、中古を持つことで、設備等の故障の時期をある程度ずらすことができます)。

 新築には減価償却費を大きく取ることで、比較的節税効果があると言われています。また、内装や設備も最新のものであり、当面は故障等がありません。中古は、新築と比較すると物件価格が安く感じるでしょうが、設備が古かったりすると入居者のニーズに合わない物件もあります。

 トーシンパートナーズ様のように、物件の企画・開発から販売・管理まで一貫して実施している会社は安心できると思います。新築で物件を購入した後、中古として売却するときも面倒を見てもらえるのは安心ですね。

 投資は自分の将来を見据えたうえで、自分がどうありたいかを考える良い機会になると思っています。私自身も不動産投資を実践しており、とても良いものである、という認識です。

 不動産投資の教科書編集部でも、初めての方向けの書籍を発刊したり、セカンド・オピニオンをとおして相談にのっています。これから新規に検討する投資家にとって頼れる存在でありたいと考えています。知らないと判断できないようなこともあるので、気軽に相談をしてみてください。

さいごに

マイナス金利の解除されたタイミングで不動産投資して良いものか、悩んでいらっしゃる方は多いと思います。山本氏が考える経済的な時期・状況を考慮するのはもちろん、投資をされるご自身の時期・状況にも目を向けることが大事です。不動産投資は「時間」を使う投資です。購入する際の年齢が上がればローンを組める年数が短くなり、毎月の負担が増えます。また、購入を先送りにした分、家賃収入を得る機会を逃してしまうこともまた事実です。ビジネスパーソンの方であれば、転職や産休・育休などライフイベントによってローンが組めなくなる時期もあるかも知れません。もちろん見送った後に病気になってしまったら団体信用生命保険に加入することも難しくなるでしょう。時期が良くないとあまり決めつけず、メリットとデメリットを天秤にかけながら後悔のない判断をしましょう。

また優良物件の見極めは不動産投資において最も大きなポイントの一つです。情報が手に入りやすい今の時代に周辺相場を加味せず購入される方はまずいないでしょう。注意したいのは数字だけで判断する、ということです。数字はわかりやすい基準であるため盲目的に判断してしまいがちですが、山本氏が指摘するように「長く賃貸ニーズがある物件かどうか」が重要です。モノの値段は需要と供給で決まり、その原則は不動産価格や家賃にも当然当てはまります。つまり賃貸ニーズが上がれば家賃も上がり、家賃が高く取れる物件は資産価値は高くなります。ただ単純に設定家賃が高い物件なのか、ニーズを捉えているために高い家賃でも安定して入居が続いている物件なのか。その点を見極めると良い物件に出会えるかも知れません。 どんな投資マイナスな情報はプラスの情報よりも大きな影響を持つものです。マイナス面を知ったからと言って頭ごなしに否定することなく、冷静に判断する目を持ちましょう。もちろんプラス面を信じすぎることもないよう十分に注意してください。